自費で払った深夜のタクシー代は、出勤日の帰宅で業務との関係を記録で示せる部分に限り経費に入れられます。店が負担する「送り」は、明細に送り代として載っていれば報酬(収入)の一部で、載っていなければ収入にも経費にもなりません。この記事は送りとタクシー代だけを扱い、衣装や美容代は経費の記事に分けています。
この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。金額と条文は2026-09-12に国税庁・e-Gov法令検索で確認しました。
「送り」と呼ばれているものは、店によって中身が違います。税金の扱いは中身で決まるので、まず自分の店がどれかを明細で確かめます。
| 区分 | 明細の見え方 | 自分の収入 | 自分の経費 | 残す記録 |
|---|---|---|---|---|
| ①店の送迎車(無料) | 何も載らない | ならない | ならない | 出勤日と退勤時刻だけ |
| ②店が現金で送り代を出す | 「送り」「車代」「タクシー代」の支給項目 | 報酬に含まれる(源泉10.21%の対象) | 自分が実際に払ったタクシー代を経費に | 明細+タクシーの領収書か乗車履歴 |
| ③店が送り代を天引きする | 「送り代」の控除項目 | 影響なし(天引き前の報酬が収入) | 天引き額を経費に | 明細(控除額が根拠になる) |
| ④自費でタクシー | 何も載らない | 影響なし | 業務のために必要と区分できる額 | 領収書か乗車履歴+1行メモ |
②が意外に思えるかもしれませんが、国税庁は「源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるもの」として「報奨金や衣装代」と並べて「深夜帰宅するためのタクシー代」を挙げています(No.2807)。通達でも、報酬の性質を持つものは「車賃」などの名義で払われても源泉徴収の対象になるとしています(所得税基本通達204-2)。つまり店が出す送り代は、店から見ると報酬の一部です。その代わり、自分が払ったタクシー代のほうは経費として記録できます。
①の送迎車のような金銭以外の利益については、ホステス等が役務の提供先から受けるものは「給与等とされる経済的利益の取扱いに準ずる」とされています(所得税基本通達204-3(1))。具体的にいくらで評価するかまでは一次資料で確認できませんでした(未確認)。実務上は明細に載らないので、収入にも経費にも入れないのが自然です。
自費のタクシー代(④)が経費になるかどうかは、家事関連費のルールで決まります。国税庁は、家事上と業務上の両方にかかわる費用について「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています(No.2210)。通達では、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定し、50%以下でも「必要である部分を明らかに区分することができる場合」はその金額を経費にしてよい、とされています(所得税基本通達45-2)。判定は業務の内容や経費の内容などを「総合勘案」します(同45-1)。
帰宅は私用の面もあるので、「深夜だから全部経費」とは言えません。一次資料の中に「ホステスの深夜帰宅のタクシー代は経費になる」と明記した文書はなく、最終的には税務署の判断です。ただ、説明の材料はそろえられます。
配車アプリやカード決済のタクシーでは、紙の領収書をもらわないことが多いはずです。白色申告の記帳で必要なのは「取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額」です(No.2080)。この3つが後から出せる形になっていれば足ります。
| 記録 | 強さ |
|---|---|
| 9/12 退勤1:40 店→自宅 3,200円/配車アプリの領収書PDF/同伴なし | 強い |
| 9/12 タクシー 3,200円/カード明細のみ/メモなし | やや弱い(日付と金額は残るが、業務との関係が書かれていない) |
| 9月 タクシー代 合計 64,000円 | 弱い(日ごとの事実がない) |
| 領収書もメモもなく「毎日乗っていた」 | 認められません |
帳簿は7年、領収書などの書類は5年の保存です(No.2080)。アプリの履歴は解約や機種変更で消えることがあるので、月末にまとめて外へ出しておきます。
タクシー代の按分は、携帯代のように「使った割合」で割るより、1回ごとに「業務か私用か」を区分する方が説明しやすい費用です。出勤日の店からの帰宅は業務側、寄り道した日や休みの日は私用側、と日単位で分けます。
経費が10万円増えると所得が10万円減り、所得税は税率5%の段なら5,105円、10%の段なら10,210円減ります(復興特別所得税込み)。住民税も別に約1万円減ります。タクシー代は年間で数十万円になるので、記録を残すかどうかで差が出る費目です。
店によっては報酬ではなく給与として払っています。給与なら、タクシー代を含めて経費という考え方がなく、代わりに給与所得控除(令和8年分は最低74万円。令和8年12月1日施行・No.1410)が自動で引かれます。店が通勤手当を出していれば、最も経済的で合理的な経路の分は月15万円まで非課税ですが(No.2582)、タクシーの扱いはそのページに記載がありません(未確認)。
報酬か給与かは明細で見分けられます。源泉の欄が「(報酬 − 5,000円×日数)×10.21%」で計算されていれば報酬、源泉徴収税額表(月額表の甲欄・乙欄)で引かれ、年明けに源泉徴収票が出るなら給与です。検算の手順は源泉徴収10.21%の検算の記事にまとめました。
自分の収入にも経費にもならないので、金額の記録は要りません。ただし明細に「送り代」として天引きがあれば、それは自分が負担したタクシー代と同じなので、明細を根拠に経費として記録します。出勤の記録(日付と退勤時刻)は残しておくと、自費タクシーの日との区別がつきます。
お客さまとの移動(店からアフター先まで)は業務のための移動として記録できます。アフター先から自宅までは、店からの帰宅と同じ扱いです。相手の名前と店名を記録に残しておくと、業務との関係を説明しやすくなります。
配車アプリの乗車履歴、クレジットカードの利用明細、乗った直後のメモ(日付・区間・金額・タクシー会社)があれば、取引の年月日・相手方・金額という記帳に必要な事実は残せます(国税庁No.2080)。何も残っていない支出は認められにくいので、乗った日のうちに1行書いてください。
ヨルタスは夜職向けの確定申告アプリです。出勤と売上を日ごとに記録し、経費はお客さまと紐づけて「誰のため」を残せます。タクシー代は出勤日の記録と並ぶので、出勤していない日の支出が混ざっていないかを後から確かめられます。店からもらった額を月ごとに入れると、引かれた源泉徴収と戻る見込みを計算します。記録は端末の中だけに保存されます。
基本無料(顧客管理・出勤と売上の記録・経費記録・源泉徴収計算)|Pro 年額3,000円(収支内訳書の下書き・経費一覧CSV/PDF・源泉徴収明細・バックアップ)|データは端末内保存
いずれも2026-09-12に確認。