今日やることは、差し押さえで「いくら残るか」を計算する前に、税務署か納税課に電話して猶予の申請を始めることです。給与所得者なら国税徴収法第76条で毎月10万7千円と家族1人あたり4万8千円、その残りの20%が守られますが、個人事業主の売掛金・委託報酬・預金にはこの計算は原則使えません。守られるのは第75条の生活必需品と仕事道具、第78条の事業用の器具だけで、金銭は法律上ほぼ守られない。だから生活費を守る手段は、差し押さえに入る前の猶予です。
この記事は国税(所得税・消費税)の滞納処分を軸に書いています。住民税・国保などの地方税も滞納処分は国税徴収法の例によるので(地方税法第331条第6項)、同じ枠組みです。
差し押さえで検索すると出てくる「手取りの一定額は守られる」という説明は、国税徴収法第76条第1項の給与の差押禁止です。条文が守るのは「給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権」で、条文はこれを「給料等」と呼びます。守られる額は、源泉所得税・特別徴収の住民税・社会保険料、10万7千円+4万8千円×生計を同じくする配偶者や親族の数(施行令第34条)、その残りの20%の合計です。計算例は税金の滞納で差し押さえはいつ来るかに載せました。
個人事業主の収入はここに入りません。国税庁の基本通達第76条関係1は「これらの性質を有する給与」を役員報酬、超過勤務手当、扶養家族手当、宿日直手当、通勤手当等と例示していて、請負や委託の報酬、売掛金は挙げられていません。雇用関係のない報酬は給料等ではなく、第62条の「債権」として、支払う側(第三債務者)に債権差押通知書が送達された時に差し押さえの効力が生じ、滞納者は取り立てを禁じられます。取引先に通知が届くので、取引先に滞納が知られます。
| 収入の形 | 第76条の差押禁止額 | 差し押さえの方法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 会社からの給与・賞与 | 使える | 勤務先に通知(第62条) | 勤務先に知られる。賞与も同じ計算(第76条第3項) |
| 請負・委託の報酬、売掛金 | 原則使えない | 取引先(第三債務者)に通知 | 通達第76条関係4により、生計維持のための継続的給付なら民事執行法第152条の限度で差し押さえない扱いがあり得る |
| 国民年金・厚生年金 | 使える(第77条で給料等とみなす) | 年金の支払機関に通知 | 振込後の預金には及ばない |
| 預金 | 使えない | 金融機関に通知 | 残高全額が対象になり得る |
| 現金(給料等として受け取った直後) | 第76条第2項で次の支払日までの日割り分が保護 | 捜索・差押え | 事業収入の現金には適用されない |
第76条第2項は、給料等に基づき「支払を受けた金銭」について、差押禁止額に、支給期間のうち差押えの日から次の支払日までの日数の割合を掛けた額までは差し押さえられないと定めています。守られるのは現金で受け取った給料です。口座に振り込まれた瞬間、それは金融機関に対する預金債権になり、給料や年金という性質は引き継がれないとするのが一般的な運用です。給料の振込による預金は差押禁止債権の属性を承継しないとした最高裁判所の判例(平成10年2月10日判決)が紹介されることが多いですが、この記事では裁判所サイトで原文を確認できておらず、未確認と書いておきます。
年金も同じです。第77条は国民年金・厚生年金などの社会保険制度に基づく年金を給料等とみなして第76条を適用するので、年金の支払機関に対する差し押さえには計算式が使えます。しかし振り込まれた後の預金には及びません。年金の振込日に残高全額を差し押さえられる事例が起きるのはこの構造のためです。
第75条は、滞納者と生計を同じくする親族の生活に欠かせない衣服・寝具・家具・台所用具・畳・建具、3か月分の食料と燃料、自分の労力で農業・漁業を営む人の器具や種子・漁具、技術者・職人・労務者など主として自分の知的または肉体的な労働で職業に従事する人の業務に欠かせない器具その他の物(商品は除く)、実印、位牌、系譜・日記、義手・義足などを差押禁止財産にしています。基本通達第75条関係は、第5号の器具について「種類、用途、使用の実情」から必要な限度を判断するとしています。
第78条は、農業に必要な機械・器具・家畜・農地、漁業に必要な漁具・漁船、そして「職業又は事業の継続に必要な機械、器具その他の備品及び原材料その他たな卸をすべき資産」を条件付差押禁止財産にしています。滞納者が、滞納の全額を徴収できて換価が難しくなく第三者の権利の目的になっていない別の財産を提供すれば、これらは差し押さえないものとされます。通達第78条関係は、他に換価が容易で滞納国税の全額を徴収できる財産がない場合に限って差し押さえるとしています。配達用のバイクや作業用の工具、仕入れた在庫がここに当たり得ますが、提供できる別の財産がなければ差し押さえの対象です。
民間の借金との違いも押さえておきます。カードローンなどの私債権では、貸金業者は判決などの債務名義がなければ強制執行できず(民事執行法第22条)、給与は4分の3が差押え禁止です(第152条)。税金は裁判所なしで役所が自ら差し押さえ、給与の禁止額は第76条の計算で私債権より少なく、個人事業主の報酬には原則それすらない。税と保険料を最初に片づける理由がここにあります。順番の全体は個人事業主がお金がない時、何から払う順番に書きました。
以上をまとめると、個人事業主の金銭は差し押さえに入った時点でほぼ守られません。守る手段は差し押さえの前にあります。一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり納税に誠実な意思があれば、納期限から6か月以内の申請で換価の猶予(国税徴収法第151条の2、地方税は地方税法第15条の6)、災害・病気・事業の廃止や休止・著しい損失なら納税の猶予(国税通則法第46条第2項、地方税は徴収猶予)が使えます。猶予が通れば差押えと換価が猶予され、延滞税が減り、猶予額100万円以下なら担保も不要です(国税庁タックスアンサーNo.9206)。6か月を過ぎていても職権による換価の猶予(第151条)があります。
電話の言い方は「督促状が届いています。一括では払えないので、換価の猶予(または納税の猶予)を申請したいです。申請書と必要な書類を教えてください」。持ち物は本人確認書類、督促状、直近の入金と支出がわかるもの。猶予の申請には財産目録と収支の明細が要ります。全体の順序は税金の滞納で差し押さえはいつ来るかに書きました。
法律上はそうなり得ます。国税徴収法第76条の差押禁止額(10万7千円+4万8千円×生計を同じくする親族の数+残りの20%)が守るのは「給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与」に係る債権で、通達の例示も役員報酬や各種手当です。請負や委託の報酬、売掛金は給料等ではなく、第62条の債権として取引先(第三債務者)への通知で差し押さえられます。ただし国税庁の通達は、生計を維持するための継続的給付については、最低生活に支障が出る場合に民事執行法第152条の限度(4分の3)で差し押さえない扱いを示しています。
原則守られません。第76条第2項が差押えを制限するのは給料等に基づき「支払を受けた金銭」で、口座に振り込まれた後は預金債権として扱われ、残高全額が差押えの対象になる運用が一般的です。年金も第77条で給料等とみなされて同じ計算が使われますが、振込後の預金には及びません。給料の振込による預金は差押禁止の性質を引き継がないとする最高裁判所の判例(平成10年2月10日判決)が紹介されることが多いですが、この記事では裁判所サイトで原文を確認できていません。
国税徴収法第75条が定める、生活に欠かせない衣服・寝具・家具・台所用具・畳・建具、3か月分の食料と燃料、技術者・職人・労務者など自分の労働で職業に従事する人の業務に欠かせない器具(商品は除く)、実印、位牌、系譜・日記、義手・義足などです。事業の継続に必要な機械・器具・備品・原材料・棚卸資産は第78条の条件付差押禁止財産で、滞納額を徴収できる換価しやすい別の財産を提供すれば差し押さえないものとされます。
猶予も分納も「毎月いくら」で約束しますが、週払いや日払いで働いていると、給料日と約束の日がずれて口座に残っていないことが起きます。約束を1回落とすと猶予が取り消され、次は差し押さえです。「今週消す額」は、入金を入れるたびに、猶予の分納・次の納期・国保や年金の期日を12週先まで並べ、期日までの残り週数で割って「今週専用口座に送る額」を出す無料のWebアプリです。滞納→決まって出る金→借金の順に積むので、差し押さえの線にいちばん近い支払いが常に先頭に来ます。アカウント不要で、三鷹市・東京23区の納期プリセットが入っています。
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いずれも2026-09-12に確認。
給料の振込による預金と差押禁止の関係を示す最高裁判所の判例は、この記事の確認時点で裁判所サイトの原文を開けず未確認です。差し押さえの運用は税務署・自治体ごとに異なります。この記事は法令と国税庁の公開情報をもとにした一般的な説明で、個別の税務・法律相談ではありません。