領収書がなくても、出店料は経費になります。必要なのは「いつ・誰に・いくら払ったか」の記録と、それを裏づける資料です。この記事では現金・振込・QR送金それぞれの証拠の残し方と、主催者への頼み方、インボイス(消費税)でどう扱われるかを国税庁の一次資料で確認して整理します。
この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。帳簿・書類の保存期間は白色申告で帳簿7年・書類5年です(No.2080)。
所得税法第37条は、必要経費を「総収入金額を得るため直接に要した費用」と「業務について生じた販売費、一般管理費その他の費用」と定めています。出店料は販売の場を得るための費用なので、この条文にそのまま当てはまります。条文のどこにも「領収書があること」という要件はありません。
白色申告者の記帳制度(No.2080)で記帳が求められているのは、売上げや経費について「取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額」です。保存が必要な書類は「業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類」で、受け取っていない書類を保存する義務は生じません。つまり、主催者が領収書を出さない場合に自分がやることは、領収書の代わりになる記録を自分で作り、支払いの事実を示す資料と一緒に保存することです。
証拠は「自分が作った記録」と「相手や第三者が作った資料」を1つずつ組み合わせるのが基本です。自分の記録だけが並ぶと信ぴょう性が下がります。
| 支払い方法 | 自分で作る記録 | 裏づけになる資料 |
|---|---|---|
| 会場で現金払い | 出金伝票(日付・イベント名・主催者名・金額・「出店料」) | 募集要項のスクリーンショット、申込完了メール、当日のブースの写真、主催者のSNSでの開催告知 |
| 銀行振込 | 帳簿への記帳のみで可 | 通帳またはネットバンキングの取引明細、振込先が主催者名義であること、募集要項の出店料の金額 |
| PayPay等のQR送金 | 帳簿への記帳 | アプリの取引履歴(相手名・日時・金額)のスクリーンショット、募集要項 |
| 売上からの歩合天引き | 売上は総額で記帳し、手数料を経費に | 主催者からの精算メールや精算書。ない場合は自分で「総売上・手数料率・受取額」をメモし、受取の履歴を保存 |
出金伝票は文房具店の市販品でも、ノートの1行でも構いません。書くのは「2026/5/17 ○○マルシェ 出店料 5,000円 主催: ○○実行委員会 現金で受付に支払い」といった程度で十分です。主催者が個人名で活動している場合は、募集ページに載っている名義をそのまま書きます。
個人主催のマルシェでは「領収書を出す仕組みがない」ことが多く、正式な領収書を求めると断られがちです。求めるのは領収書そのものではなく、金額と日付が分かる記録1つに絞ると通りやすくなります。
返信がもらえなくても経費計上は可能です。募集要項と当日の写真で、出店した事実と出店料の金額は説明できます。
まず、自分が消費税の免税事業者ならインボイスは関係ありません。インボイスは買い手が消費税の仕入税額控除を受けるための書類で、消費税を納めない人には不要です(No.6498)。マルシェ出店者の多くはここに当てはまります。
インボイス発行事業者として登録している場合は、出店料が課税仕入れになります。個人主催者の多くはインボイスを発行できないため、原則は控除できません。ただし2つの経過措置があります。
| 経過措置 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 少額特例 | 税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿の記載だけで仕入税額控除できる。相手がインボイス発行事業者でなくても対象。判定は「1回の取引」単位(Q&A問111・112) | 令和5年10月1日〜令和11年9月30日。基準期間の課税売上高1億円以下、または特定期間の課税売上高5千万円以下の事業者 |
| 免税事業者等からの仕入れの経過措置 | インボイスがなくても仕入税額相当額の一定割合を控除できる(No.6498)。令和8年10月1日以後の割合は国税庁「令和8年度税制改正特集」に整理されている | 令和5年10月1日〜令和11年9月30日(割合は段階的に下がる) |
納付税額の側では、免税事業者から登録して課税事業者になった人向けの2割特例があります。対象は「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間」なので、個人事業者は令和8年分(2026年)が最後です(No.6498)。令和9年分・令和10年分は、基準期間の課税売上高1,000万円以下の個人事業者を対象に納付税額を売上税額の3割とする3割特例に切り替わります(国税庁 令和8年度税制改正特集)。登録を続けるかどうかは、この切り替えを見て判断してください。
領収書がないという理由だけで否認されるものではありません。白色申告の記帳義務で求められているのは取引の年月日・相手方の名称・金額の記録です(国税庁No.2080)。出金伝票に加えて、募集ページの控えや申込メール、当日の出店写真など、支払いの事実と金額を裏づける資料をセットで残しておけば説明できます。
ありません。インボイスは消費税の仕入税額控除のための書類なので、消費税を納めない免税事業者には関係がありません。所得税の経費としては、支払いの記録があれば足ります。
税込1万円未満の支払いなら、令和11年9月30日までは少額特例により帳簿の記載だけで控除できます(基準期間の課税売上高1億円以下などの要件あり、国税庁インボイスQ&A問111・112)。1万円以上で主催者がインボイス発行事業者でない場合は、経過措置で一定割合の控除にとどまります。
出店帳は、マルシェ・キッチンカー・フリマ出店者のための帳簿アプリです。出店日ごとに売上と出店料・経費をイベントに紐づけて記録するので、「いつ・どのイベントに・いくら払ったか」が帳簿として残り、イベント別の利益もその場で分かります。年末には収支内訳書のドラフトを出せます。出金伝票の代わりになる記録を、会場で支払った直後に入力しておく使い方ができます。
基本無料・買い切りPro ¥1,000 | データは端末内保存 | ブラウザで使えるWeb版
いずれも2026-09-12に確認。