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ビニールハウスの張替えは修繕費か資本的支出か【被覆材・パイプ交換・増設の判定と20万円・60万円・10%基準】

ハウス栽培の兼業農家・直売農家向け | 更新: 2026-09-12 | 根拠は所得税基本通達37-10〜37-14、法人税基本通達7-8-1〜7-8-5、国税庁No.1379、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov)

被覆フィルムの張替えは修繕費、ハウスの増設や延長は資産の取得、性能の高い資材への変更は超過分が資本的支出です。判断に迷う支出には「20万円未満または3年以内の周期なら修繕費」「60万円未満または前年末の取得価額の10%以下なら修繕費」という形式基準が通達で用意されています。この記事では判定の順番、被覆材・パイプ・増設・換気装置などの実例、計算例、資本的支出になった場合の償却、残す記録を一次資料で確認して書きます。

30秒で結論

この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。個人の通達(所得税基本通達37-10〜37-14)と法人の通達(法人税基本通達7-8-1〜7-8-5)は同じ基準で、どちらを見ても結論は変わりません。

判定の順番(この順に見る)

国税庁No.1379は「修繕費と資本的支出の区別は、修繕や改良という名目によるのではなく、その実質によって判定します」としています。業者の請求書に「修繕工事」と書いてあっても、中身で決まります。順番はこうです。

  1. 増設・延長・新設か。ハウスを1棟増やす、間口を広げる、連棟にする → 構築物の「取得」。修繕費・資本的支出の話ではなく、新しい資産として減価償却(通達37-10の注)
  2. 通常の維持管理か、損傷した資産の原状回復か → 修繕費(通達37-11)。同じ規格での張替え・部品交換・災害復旧
  3. 価値を高める、耐久性を増す部分があるか → その部分が資本的支出(通達37-10)。物理的に付け加えた設備、用途変更、品質・性能の高い資材への取替えの超過分
  4. 資本的支出か修繕費か明らかでない金額が残ったら形式基準へ。1件20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行う修理・改良 → 修繕費(通達37-12)
  5. まだ不明なら、60万円未満、または前年12月31日の取得価額のおおむね10%以下 → 修繕費(通達37-13)
  6. それでも不明なら、継続適用を条件に「その金額の30%」と「前年末取得価額の10%」のいずれか少ない額を修繕費、残りを資本的支出(通達37-14)
形式基準は「明らかでない金額」に対してだけ使えます。明らかに増設なら、20万円未満でも修繕費にはなりません(10万円未満なら少額の減価償却資産として全額経費にできる別の制度があります)。逆に、明らかに原状回復なら、100万円かかっても修繕費です。

ビニールハウスの実例で判定する

支出の内容判定理由・根拠
被覆フィルム(農ビ・農PO)を同じ規格で張り替える(3〜5年周期)修繕費通常の維持管理。周期が3年以内なら37-12(2)でも修繕費
台風・雪でフィルムが破れ、同じ規格で張り替える修繕費災害によりき損した資産の原状回復(37-11)
薄手の農ビから厚手の長期展張フィルムに変更通常の張替え相当額は修繕費、超過分は資本的支出品質・性能の高いものへの取替え(37-10(3))。不明な部分は60万円・10%基準へ
折れた・錆びたパイプを同じ径のパイプに交換修繕費原状回復(37-11)
全体のパイプを太い規格に入れ替えて耐雪強度を上げる資本的支出(通常の交換相当額を超える部分)耐久性を増す(37-10)
ハウスを1棟増設、連棟化、間口・奥行きの延長構築物の取得構築物の拡張・延長は取得(37-10の注)。耐用年数14年(金属造)
側面の巻き上げ換気装置・自動開閉装置を新設資本的支出(または別資産の取得)物理的に付け加えた部分(37-10(1))。10万円未満なら少額減価償却資産として全額経費
暖房機・循環扇の買い替え機械装置の取得ハウス本体とは別の資産。10万円のラインで判定(早見表
防虫ネット・遮光ネット・マルチの交換修繕費または消耗品費・諸材料費短期で消耗する資材。継続して同じ科目で
ハウスの移設(同じ規模で別の畑へ)修繕費機械装置の移設費用は修繕費(37-11(2)の考え方)。基礎を新設する部分は資本的支出になりうる

計算例(形式基準の当てはめ)

例1: 張替え15万円(同規格)
原状回復なので中身で修繕費。仮に不明でも1件20万円未満 → 修繕費 150,000円

例2: パイプ交換+張替えで45万円。一部を太いパイプにしたが、超過分が分からない
不明な金額45万円 < 60万円 → 修繕費 450,000円(37-13(1))

例3: 取得価額300万円のハウスに70万円の改修。原状回復か性能向上か分けられない
60万円以上、かつ前年末取得価額の10%=30万円を超える → 37-13は使えない
37-14: 70万円 × 30% = 21万円 と 300万円 × 10% = 30万円 のいずれか少ない方 → 修繕費 210,000円、資本的支出 490,000円(毎年この方法を継続)

例4: 見積書を「張替え38万円」「巻き上げ装置の新設22万円」に分けてもらった場合
張替え → 修繕費 380,000円 / 巻き上げ装置 → 資本的支出 220,000円
明細を分けるだけで形式基準に頼らず判定できる
例3と例4の違いが実務の要点です。業者に見積書・請求書の明細を「原状回復の部分」と「新設・性能向上の部分」に分けて書いてもらえば、30%ルールで修繕費が減ることを避けられます。工事の前に頼んでください。

資本的支出・取得になった場合の償却

資本的支出は、その資産と同じ種類・同じ耐用年数の新しい資産を取得したものとして減価償却します(国税庁No.1379、詳細はコード2107)。ハウスの耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一の「構築物」のうち「農林業用のもの」で決まります。

構造(農林業用の構築物)耐用年数
主として金属造のもの(パイプハウス・鉄骨ハウス)14年
主として木造のもの5年
主としてコンクリート造、れんが造、石造又はブロック造のもの(果樹棚・ホップ棚)14年
主としてコンクリート造等のその他のもの17年
土管を主としたもの10年
その他のもの8年

取得価額10万円未満の資本的支出や設備は、農具費や消耗品費として買った年の経費にできます。10万円以上20万円未満なら3年で均等に償却する一括償却も選べます。この金額のラインは農業の経費 勘定科目 早見表に整理しています。減価償却費の計算は国税庁の確定申告書等作成コーナーで資産を登録すれば自動です。

残しておく記録

よくある質問

台風でハウスのビニールが破れて張り替えました。修繕費ですか。

修繕費です。災害で損傷した固定資産の原状を回復するための支出は修繕費に当たります(所得税基本通達37-11)。同じ規格のフィルムに張り替える限り、金額の大小に関係なく修繕費として計上できます。破れた状態と張替え後の写真、見積書を残しておいてください。

張替えのついでに厚手の長期展張フィルムに変えました。全額修繕費でいいですか。

原則は分けます。通常の張替えに要する金額までは修繕費で、品質や性能の高いものに取り替えた場合の超過部分は資本的支出です(通達37-10の(3))。ただし、資本的支出か修繕費か明らかでない金額が60万円未満、または前年末の取得価額の10%以下なら、修繕費として申告することが認められます(通達37-13)。

ハウスを1棟増設しました。修繕費にはなりませんか。

なりません。建物の増築や構築物の拡張・延長は「取得」に当たります(通達37-10の注)。新しい構築物として取得価額を計上し、減価償却します。耐用年数は農林業用の構築物として、主として金属造なら14年、主として木造なら5年、その他は8年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)。

農家帳で「修繕費」と「資産」を分けて記帳する

農家帳は、兼業農家・直売農家のための帳簿アプリです。経費は収支内訳書(農業所得用)の科目そのままで記帳でき、張替えの請求書は写真を撮ればAIが修繕費などの科目に分類します。増設や装置の新設のように減価償却になる支出は、経費とは別に記録しておけば、年末の収支内訳書ドラフトで修繕費と減価償却費が混ざりません。

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参考(一次資料)

いずれも2026-09-12に確認。