田・畑の固定資産税は、租税公課として全額が農業の必要経費になります。経費にならないのは自宅の敷地や建物にかかる分です。1枚の納税通知書に田・畑・宅地がまとまっている場合は、課税明細書で地目ごとに分けます。この記事では、経費になる税とならない税の一覧、通知書の見方と按分の計算例、4期分割払いの年分の決め方、免税点30万円で通知が来ない農地の扱い、親名義の農地を耕作している場合までを一次資料で確認して書きます。
この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。固定資産税の納税義務者は1月1日時点の所有者です(地方税法第343条)。
所得税基本通達37-5は「業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する」としています。農業に使っている資産にかかる税は経費、という原則です。
| 税・負担金 | 経費になるか | 科目・根拠 |
|---|---|---|
| 田・畑の固定資産税 | 全額経費 | 租税公課(通達37-5) |
| 作業場・農機具倉庫・育苗ハウスの固定資産税(家屋・償却資産) | 全額経費 | 租税公課(通達37-5) |
| 市街化区域の農地にかかる都市計画税 | 業務用の部分は経費 | 租税公課(No.2210の「業務用の部分に限って」の考え方) |
| 自宅の敷地・建物の固定資産税 | 経費にならない | 家事上の費用(No.2210) |
| 宅地の一角にある農機具置き場・作業スペース | 面積割合で按分 | 家事関連費のうち業務に必要と明らかに区分できる金額(No.2210) |
| 軽トラック・トラクターの自動車税・軽自動車税 | 事業用なら経費 | 租税公課 |
| 土地改良区の賦課金・水利費 | 経費(繰延資産に当たる部分を除く) | 土地改良費(通達37-8) |
| 農協の賦課金 | 経費(繰延資産に当たる部分を除く) | 租税公課または雑費(通達37-9) |
| 所得税・住民税 | 経費にならない | No.2210 |
| 国民健康保険料・国民年金保険料 | 経費にならない | 社会保険料控除で引く |
| 罰金・科料・過料 | 経費にならない | No.2210 |
収支内訳書(農業所得用)では、租税公課は⑬「その他の経費」の中の「租税公課」欄です。経費側の科目全体は農業の経費 勘定科目 早見表にまとめています。
固定資産税の納税通知書には「課税明細書」が付いていて、所有する土地・家屋が1筆・1棟ごとに、所在地・地目(田・畑・宅地・山林など)・地積・課税標準額・税相当額の形で並んでいます。経費の計算はこの明細書だけでできます。
固定資産税は4月ごろに納税通知が届き、多くの市町村で4回の納期に分けて払います。第4期が翌年2月など年をまたぐ自治体もあるので、年分の決め方が問題になります。
所得税基本通達37-6は、その年の必要経費に算入する税は「その年12月31日までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したもの」としています。固定資産税は納税通知(賦課決定)が来た時点で年税額が確定するので、原則は通知が来た年に年税額の全額を経費にします。
ただし同じ通達の(3)で、「賦課課税方式による租税のうち納期が分割して定められている税額」は「各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができる」とされています。
| 方法 | 令和8年分の経費に入る額(年税額40,000円・納期4/6/9/12月の例) |
|---|---|
| 原則: 通知の年に全額 | 40,000円(令和8年4月の通知で確定) |
| 納期開始日の年 | 4期とも令和8年中に納期が始まるので40,000円。第4期が翌年2月の自治体なら30,000円+前年の第4期分 |
| 納付日の年 | 令和8年中に実際に払った分だけ。第4期を翌年1月に払えば30,000円+前年第4期分 |
どの方法でも数年で見れば合計は同じです。年によって切り替えると二重計上や漏れが起きるので、最初に決めた方法を続けます。
地方税法第351条は、同一の者が同じ市町村内に持つ土地の課税標準額の合計が30万円未満(家屋は20万円未満、償却資産は150万円未満)の場合、固定資産税を課することができないと定めています(条例で課税できる例外あり)。農地の課税標準額は宅地より低いので、小規模な兼業農家では田・畑の合計が30万円に届かず、そもそも通知が来ないことがあります。
この場合、払っていない税は経費になりません。「農地を持っているのだから固定資産税相当額を経費に」という処理はできません。逆に、市町村が別なら免税点は市町村ごとに判定するので、隣町の農地には課税されていることもあります。通知書が届いた市町村の分だけを、上の手順で経費にします。
兼業農家では、農地の名義は親のまま、耕作と申告は子が行っているケースが多くあります。国税庁No.2210は、生計を一にする配偶者や親族に支払う地代家賃は必要経費にならないとしつつ、「例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります」と明記しています。
| 状況 | 子(耕作者)の経費 | 備考 |
|---|---|---|
| 親と同居・生計が同じ。親名義の田を子が耕作 | 田の固定資産税は子の租税公課 | 親に払う小作料は経費にならず、親の収入にもならない(No.2210) |
| 親と別居・生計が別。小作料を払って借りている | 小作料が「小作料・賃借料」の経費 | 固定資産税は親の側の問題。子の経費には入れない |
| 親が亡くなり相続で名義が自分になった | 1月1日時点の所有者が納税義務者(地方税法第343条) | 相続した年は親名義の通知が来るが、相続で取得した業務用資産の固定資産税も経費(通達37-5の注1) |
親が払っている税額を子の経費にする場合、課税明細書の写しを親からもらい、農地分の税額を自分の帳簿に記帳します。誰の口座から払ったかは要件ではありません。
通知書に付いている課税明細書を見ます。筆ごとに地目(田・畑・宅地)と課税標準額・税相当額が載っているので、田と畑の税相当額を足した額が農業の経費です。宅地は原則経費になりませんが、宅地の一部に農機具倉庫や作業場があるなら、その面積割合分だけ経費にできます(国税庁No.2210の家事関連費)。
どちらかを選べます。原則は納税通知(賦課決定)が来た年に全額を経費にする方法です。納期が分割されている税は、各納期の税額をそれぞれ納期の開始日または実際に納付した日の属する年の経費にすることもできます(所得税基本通達37-6)。毎年同じ方法を続けてください。
親と生計を一にしていれば、親が所有する農地を自分の農業に使っている場合、その農地の固定資産税は自分の農業の必要経費になります(国税庁No.2210)。親に小作料を払っても経費にはならず、親の側でも収入になりません。生計が別なら、自分が払った小作料が経費で、固定資産税は親の側の話になります。
農家帳は、兼業農家・直売農家のための帳簿アプリです。経費は収支内訳書(農業所得用)の科目そのままで記帳でき、固定資産税は「租税公課」を選んで金額を入れるだけです。納税通知書はレシートと同じように写真を撮ればAIが科目を分類します。年末には⑬その他の経費の租税公課欄に集計された収支内訳書ドラフトができるので、按分の計算を毎年やり直す必要がありません。
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いずれも2026-09-12に確認。