収入保険の保険金は、振り込まれた年ではなく「保険期間の年」の収入です。個人の保険期間は1〜12月で、保険金の支払いは翌年3〜6月。申告期限の3月15日には金額が確定していないため、見積額で計上します。この記事では国税庁ホームページに掲載された通知の3つのルール、見積計上の手順、簡易帳簿の記入例、保険料・積立金・つなぎ融資の扱い、よくある間違いを整理します。
この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。保険料には50%、積立金には75%の国庫補助があります(農林水産省 収入保険ページ)。
国税庁ホームページの「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて」に掲載されているのは、農林水産省経営局保険課長から全国農業共済組合連合会に宛てた通知(平成30年4月2日付 29経営第3611号)です。国税庁課税部と協議した結果として、次の3点を定めています。
| 項目 | 通知の内容 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 1 保険料・事務費 | 保険期間の必要経費(個人)に算入する | 令和8年の保険期間分の保険料と付加保険料(事務費)は令和8年分の経費。前年中に前払いした場合は継続適用を条件に支払った年の経費にもできる(Q&A問88) |
| 2 積立金 | 預け金として取り扱われ、課税関係は生じない | 払っても経費にならず、戻ってきても収入にならない |
| 3 保険金等 | 保険金と特約補てん金のうち国庫補助相当分は、保険期間の年分の総収入金額に算入する。見積額で申告し、実額との差額が少額なら翌年分で減算・加算して調整できる | 入金の年ではなく保険期間の年。申告時は見積額 |
農水省Q&A問86は、翌年に共済金を払う仕組みの果樹共済で共済金を収穫年の総収入金額に算入している扱いに合わせた、と理由を説明しています。収入が減った年と補てんの年をそろえないと、減収年は赤字、翌年は保険金で黒字という形で税負担が偏るためです。
青色申告でも簡易な方式(10万円控除)なら、帳簿は日付・相手・科目・金額の1行で足ります。保険金は「見積で計上し、翌年に回収と差額調整」の3行で表します。
| 日付 | 相手・内容 | 科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 2026/3/25 | NOSAI ○○ 収入保険 保険料・事務費(保険期間2026年) | 農業共済掛金 | 96,000円 |
| 2026/3/25 | 同 積立金(預け金・経費にしない) | 記帳のみ(経費外) | 50,000円 |
| 2026/12/31 | 収入保険 保険金等 見積額(保険期間2026年・算出ツールにより計算) | 雑収入(未収) | 1,750,000円 |
| 2027/5/20 | 収入保険 保険金等 入金(2026年計上分の回収) | 未収金の回収(収入に二重計上しない) | 1,720,000円 |
| 2027/5/20 | 見積額との差額(1,750,000 − 1,720,000) | 雑収入の減算(2027年分で調整) | −30,000円 |
青色申告決算書(農業所得用)では、保険金等は雑収入に、保険料と事務費は農業共済掛金に入ります。白色申告の収支内訳書(農業所得用)にも同じ欄がありますが、収入保険の加入要件は青色申告なので、収支内訳書で保険金を申告するケースは基本的にありません。
| お金の動き | 収入・経費になるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 保険料(掛捨て・50%国庫補助後の自己負担分) | 保険期間の必要経費(農業共済掛金) | 通知1 |
| 付加保険料(事務費) | 保険期間の必要経費 | 通知1 |
| 積立金(75%国庫補助後の自己負担分) | 預け金。経費にならない | 通知2 |
| 保険方式の保険金 | 保険期間の年の総収入金額 | 通知3 |
| 積立方式の特約補てん金のうち国庫補助相当分 | 保険期間の年の総収入金額 | 通知3 |
| 積立方式の特約補てん金のうち自己積立分 | 収入ではない(預け金の戻り) | 通知2・3 |
| 使われなかった積立金の翌年繰越 | 課税関係なし | 通知2 |
| つなぎ融資(無利子・保険金等支払見込額の8割が上限) | 借入金。収入ではない。返済も経費ではない | Q&A問97・98 |
都道府県や市町村が保険料を補助している地域では、補助分は自分の負担ではないので経費にしません。自己負担分だけを農業共済掛金に計上します。
いけません。収入保険の保険金と特約補てん金のうち国庫補助相当分は、保険期間の年分の総収入金額に算入すると定められています(農林水産省経営局保険課長通知 29経営第3611号、国税庁ホームページ掲載)。申告期限までに金額が確定していないので、見積額で計上します。入金した年に計上すると、収入が減った年と保険金の年がずれ、税負担が偏ります。
差額が少額であれば、修正申告や更正の請求の代わりに、翌年分の所得の計算で差額を加算または減算して調整することができます(同通知3)。農水省のQ&A問87も、NOSAI全国連の見積額算出ツールや共済組合職員のサポートにより、修正申告が必要になるケースはほとんどないとしています。
なりません。積立金は自分のお金(預け金)なので、補てん金のうち自分の積立金から出た部分は収入ではありません。総収入金額に入れるのは、保険金と、特約補てん金のうち国庫補助相当分(積立金には75%の国庫補助があります)だけです。
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いずれも2026-09-12に確認。