契約書がなくても、契約は成立しています(民法522条2項)。そして令和6年11月1日以降は、業務委託をする側に、報酬の額・支払期日・業務の内容を書面かメール等で明示する義務があります(フリーランス法3条)。この記事では、手元の記録で条件を固める方法、報酬が払われないときの順番、無料の相談窓口を書きます。
条文は2026-09-12にe-Gov法令検索で、相談窓口の情報は同日にフリーランス・トラブル110番の公式サイトで確認しました。税務の部分は令和8年分(2026年1〜12月)を前提にしています。
民法は、契約は申込みに相手方が承諾したときに成立し、法令に特別の定めがある場合を除いて書面は要らない、としています(522条)。「還元率50%」「席代は月5万円」「材料費は自己負担」と口頭で決めて働き始めた時点で、契約はあります。
困るのは、内容を証明できないことです。相手が「還元率は45%と言った」と主張したとき、記録がなければ水掛け論になります。だから記録を、契約書の代わりに今から作ります。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)は、令和6年11月1日に施行されました。あなたが従業員を使わない個人なら「特定受託事業者」(2条1項1号)に当たり、サロンは「業務委託事業者」(2条5項)です。
| 義務・禁止 | 内容 | 相手の条件 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 取引条件の明示 | 業務委託をした場合は直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日その他の事項を書面または電磁的方法で明示する。内容が決められない正当な理由があるものは、決まった後直ちに明示 | すべての発注者(従業員の有無を問わない) | 3条1項 |
| 書面の交付 | メール等で明示された場合、書面の交付を求めたら遅滞なく交付する | 同上 | 3条2項 |
| 支払期日 | 役務の提供を受けた日から60日以内で、できる限り短い期間に定める。定めがなければ役務提供日が支払期日、60日を超えて定めれば60日目が支払期日 | 従業員を使う発注者(特定業務委託事業者) | 4条1項・2項 |
| 禁止行為 | 政令で定める期間以上続く業務委託で、責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額すること、受領を拒むこと、著しく低い報酬を不当に定めること、正当な理由なく自己の指定する物や役務を強制して購入・利用させること | 従業員を使う発注者 | 5条1項 |
「明示すべき事項」の細目と、5条の「政令で定める期間」の具体的な長さは公正取引委員会規則と政令で定められていて、この記事では条文本体だけを確認しました(細目は未確認)。ただ、報酬の額と支払期日が書面かメールで示されなければならないことは、法律の本文で読めます。
次の記録がそろえば、契約の内容と実際の支払いを両方から示せます。
| 記録 | 示せること | 残し方 |
|---|---|---|
| 報酬計算のメール・LINE | 還元率、席代、材料費の負担、締め日と支払日という契約の条件 | スクリーンショットを日付が分かる形で保存。口頭で言われた条件は、その日のうちに自分から「本日の確認:還元率50%、材料費は自己負担、月末締め翌月15日払いでよろしいですか」と送り返し、返信を残す |
| サロンの売上明細・精算書 | サロン側が計算した売上と控除の内訳 | 毎月もらう。出ないなら「精算書をください」と頼んだ記録を残す |
| 振込記録 | 実際に払われた額と日 | 通帳・ネットバンキングの明細。手渡しなら受取日と額を自分で記録 |
| 自分の施術記録 | 日付・お客さま・メニュー・金額の事実。サロンの明細と照合する材料 | 1件ずつ当日に記録。記帳義務の項目(年月日・相手方・金額)と同じ(国税庁No.2080) |
| 求人票・募集ページ | 最初に提示された条件 | 応募時のスクリーンショット |
この計算は、確定申告で使う売上の記録と同じものです。業務委託ではお客さまの支払額ではなく還元率をかけた額が自分の売上になるので、日々の記録がそのまま契約の証拠と申告の材料の両方になります。
相手が契約書を出さないなら、条件の明示を求めるメールを自分から送ります。返信がそのまま3条の電磁的方法による明示に近づきます。
返信が来たら保存し、以後は毎月の施術記録と明細を照合します。条件が変わるときは、その都度同じ形で確認を送ります。
できます。確定申告に契約書の添付は要りません。必要なのは、取引の年月日・相手方・金額が分かる記録です(国税庁No.2080)。自分の施術記録、サロンの売上明細、振込記録があれば、売上と源泉徴収の事実は示せます。
あります。フリーランス法3条の明示義務は「業務委託事業者」に課され、従業員を使っているかどうかを問いません(2条5項)。ただし、支払期日を60日以内にする義務(4条)や報酬減額などの禁止(5条)は、従業員を使う「特定業務委託事業者」に限られます(2条6項)。
無料で、匿名でも相談できます。厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営し、弁護士が対応します。電話は0120-532-110(受付9時30分〜16時30分、土日祝日を除く)でメール相談もあります。相談担当の弁護士が代理人になったり相手と直接交渉することはできない、と公式サイトに明記されています。
サロタスは業務委託の美容師・ネイリスト・アイリスト向けの確定申告アプリです。サロンと還元率を登録しておくと、施術を1件入れるたびにお客さまの支払額と自分の売上を自動で振り分けます。月ごとの自分の売上が出るので、サロンの明細や振込額との差がすぐ分かります。Proでは顧客別売上と経費一覧をCSV/PDFで出せるので、請求や相談のときに根拠として渡せます。
基本無料(顧客カルテ・売上と施術の記録・経費と家事按分・税額の試算)|Pro 年額2,500円(収支内訳書の下書き・経費一覧CSV/PDF・顧客別売上・バックアップ)|アカウント不要
いずれも2026-09-12に確認。