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一人親方の支払調書がもらえない時の確定申告【交付義務なし・売上の再構成】

一人親方・職人向け | 更新: 2026-09-12 | 根拠は所得税法204条・225条・226条、国税庁No.7431・No.2030・No.2080、所得税基本通達36-8

支払調書は「もらえなくて当然」の書類です。申告には要りません。元請けが税務署に出す法定調書であって、本人に渡す義務は条文にありません。確定申告に必要なのは自分の売上の記録です。この記事では、出面記録・請求書控え・通帳の3点から令和8年分の売上を組み立てる手順と、源泉徴収されている場合の還付の受け方を書きます。

30秒で結論

この記事は令和8年分(2026年1〜12月、申告は2027年2〜3月)を前提にしています。

支払調書に「本人交付」の義務はない

所得税法225条1項は、報酬などの支払をする者に「支払に関する調書を、翌年1月31日までに税務署長に提出しなければならない」と定めています。提出先は税務署だけで、支払を受けた人に渡せとは書かれていません。一方、給与の源泉徴収票は226条で「二通を作成し、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない」と明記されています。この差が「源泉徴収票は必ずもらえるが、支払調書はもらえないことがある」理由です。

国税庁のNo.7431(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)でも、本人への交付は「写しを交付する場合」という任意の扱いで、その場合はマイナンバーを記載してはいけない、と書かれています。元請けが「出しません」と言うのは、法律上は正しい対応です。

書類根拠本人への交付一人親方との関係
報酬の支払調書所得税法225条1項3号、No.7431義務なし(任意)204条の報酬(原稿料・士業報酬など)を払う側が作る。人工代は列挙にないため、作られないことが多い
給与の源泉徴収票所得税法226条1項義務あり(翌年1月31日まで)元請けが「給与」として源泉徴収しているなら、もらえるはず。もらえなければ請求できる
支払通知書・支払明細法律上の定めなし(元請けの任意)元請け次第締めごとの請求額・控除額・振込額が分かる。あれば最強の突き合わせ資料
もし元請けが「給与」として源泉徴収しているなら、話は別です。それは支払調書ではなく源泉徴収票の話で、226条により交付義務があります。「支払調書をください」ではなく「源泉徴収票をください」と頼んでください。自分の報酬が外注費(事業所得)なのか給与なのかは、契約の実態で決まります。

売上を再構成する手順(出面 → 請求書控え → 通帳)

支払調書があってもなくても、申告の根拠は自分の帳簿です。次の順で1年分を組み立てます。

  1. 出面記録を月ごとに集計する:現場ごとに「日付・人工数(半人工は0.5)・単価」。常用なら人工 × 単価が請求の元になります。請負なら契約金額と、出来高で請求した日
  2. 請求書控えと突き合わせる:締め日ごとの請求書(番号・発行日・税込額・控除行)を並べ、出面の集計と一致しているか確認。請求漏れがあればここで見つかります
  3. 通帳の入金と照合する:請求額と振込額の差を1件ずつ説明する。差額は「源泉徴収税」「安全協力費などの天引き」「振込手数料」「一部入金」のどれか
  4. 年分を決める:事業所得の収入は、役務の提供を完了した日(請負は引渡しの日)に計上します(所基通36-8)。12月の出面は翌年1月に入金されても令和8年分の売上です。逆に前年12月分の1月入金は令和8年分には入れません
  5. 未入金も売上に入れる:入金がなくても完了した仕事は売上です。回収できない場合の処理は 未払いの回収と貸倒損失 を参照
計算例:12月分の常用(20日締め・翌月末払い)
出面記録 11/21〜12/20 = 18人工 × 単価23,000円 = 414,000円
請求書控え No.2612 = 414,000円 + 消費税41,400円 = 455,400円(税込)
通帳 令和9年1月30日 入金 452,400円
差額 3,000円 = 請求書の控除行「安全協力費」と一致
令和8年分の売上 455,400円(税込経理)、経費 3,000円(諸会費など)。入金日が1月でも年分は令和8年

この突き合わせを12か月分やると、支払調書に書かれるはずだった「年間支払額」が自分の手元で出来上がります。元請けが複数なら元請けごとに同じ表を作り、合計が年間売上です。

源泉徴収されている場合の還付

一人親方の人工代は、所得税法204条1項に列挙された報酬(原稿料、弁護士・税理士などの報酬、外交員報酬、芸能人の出演料など)に当たらないため、原則として源泉徴収の対象ではありません。ただし、元請けが給与として処理している場合や、業務の内容によっては源泉徴収されていることがあります。振込額が請求額より1割ほど少ないなら、まず源泉徴収を疑ってください。

計算例:源泉徴収税額の逆算
請求 税抜500,000円(税込550,000円)、入金 498,950円
差額 51,050円 = 500,000円 × 10.21%
源泉徴収税額 51,050円を確定申告書の「源泉徴収税額」欄に記入。所得税額から差し引かれ、引ききれなければ還付

源泉徴収された税は前払いです。年間の所得から計算した税額より多く引かれていれば、差額が戻ります。確定申告の義務がない人でも、還付を受けるための申告はその年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁No.2030)。令和8年分なら令和9年1月1日から令和13年12月31日までです。申告書には支払調書の添付は求められていないので、支払調書がなくても源泉徴収税額は書けます。ただし金額の根拠は必要なので、上の逆算の表と通帳の写しを手元に残してください。

元請けへの頼み方の例:「令和8年分の支払額と源泉徴収税額を確認したいので、支払通知書か支払調書の写しをいただけますか。交付の義務がないのは承知していますが、金額の確認だけでも助かります」。義務がないことを分かった上で頼むと、出してもらえることが多いです。断られても申告はできます。

記録の残し方(来年は突き合わせを楽にする)

今年の再構成が大変だった人ほど、来年のために次の3つを日々の習慣にしてください。

帳簿は7年、請求書や領収書などの書類は5年の保存義務があります(国税庁No.2080)。支払調書の代わりになるのはこの帳簿と書類です。

よくある質問

支払調書がないと確定申告は受け付けてもらえませんか?

受け付けてもらえます。支払調書は確定申告書の添付書類ではなく、元請けが税務署に提出する法定調書です(所得税法225条)。申告に必要なのは自分の帳簿と、その根拠になる出面記録・請求書控え・通帳です。源泉徴収された税額を申告書に書くときも、支払調書の添付は求められていません。

元請けの支払額と自分の請求額が合いません。どちらで申告しますか?

自分の記録で計算した金額で申告します。差額の正体は、源泉徴収税、安全協力費などの天引き、振込手数料、締め日のずれ(12月分が翌年1月に入金)のどれかであることがほとんどです。売上は税込の請求額で計上し、天引きされた安全協力費は経費、源泉徴収税は申告書の源泉徴収税額欄に書きます。差額が説明できないときは元請けに明細を確認してください。

源泉徴収されているのに何年も申告していません。今からでも戻りますか?

還付申告はその年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁No.2030)。令和3年分は令和8年12月31日までです。ただし、事業所得がある人は本来は申告義務があるので、所得が出る年は還付ではなく納税になることもあります。各年の出面記録・請求書・通帳を年ごとに揃えてから、古い年分から順に作ってください。

親方帳なら、出面から年間売上まで自動でつながる

親方帳は一人親方・職人の出面帳アプリです。現場ごとの出面(人工)を記録すると、常用・請負の別と人工単価から請求金額が計算され、請求書PDFを発行できます。請求書は入金待ち/入金済みで管理でき、年間の収入・経費・概算の所得をいつでも確認できます。この記事の「出面 → 請求書控え → 入金」の突き合わせは、アプリの中で日々終わっている状態になります。経費はレシートを撮るだけでAIが建設業の勘定科目に分類します。

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参考(一次資料)

いずれも2026-09-12に確認。