KANAU WORKSアプリ開発スタジオ一人親方ガイド

一人親方の簡易課税は第3種か第4種か【材料支給なら第4種・計算例】

インボイス登録済み・登録を検討中の一人親方向け | 更新: 2026-09-12 | 根拠は国税庁No.6509・No.6505・No.6501・No.6498、消費税法基本通達13-2-4・13-2-7、国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」

材料を自分で仕入れて施工するなら第3種(70%)、元請けの材料で手間だけ出すなら第4種(60%)です。建設業は本来第3種ですが、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」は第4種に落ちる、と国税庁の通達に書かれています。常用の人工代は多くがこれに当たります。この記事では判定の順番、売上1,000万円の納付額の違い、令和8年分で終わる2割特例と令和9・10年分の3割特例との比較を書きます。

30秒で結論

この記事は令和8年分(2026年1〜12月、消費税の申告は2027年3月末まで)を前提にしています。消費税額は国税7.8%と地方消費税2.2%の合計10%で示します。

まず、消費税を納める立場かどうか

簡易課税の話の前に、納税義務があるかを確認します。前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務は免除されます(No.6501)。ただし適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている人は、売上が1,000万円以下でも免除されません。元請けに求められて登録した一人親方は、この時点で課税事業者です。

課税事業者の納付額の出し方は3通りあります。実際の仕入れ・経費の消費税を差し引く本則課税、売上税額にみなし仕入率を掛ける簡易課税、そして免税事業者が登録して課税事業者になった人だけが使える2割特例・3割特例です。どれが有利かは後半の表で比べます。

第3種か第4種か:判定の順番

簡易課税の事業区分は6つあり、建設業は第3種(みなし仕入率70%)に分類されています(No.6509)。ただし同じページに「第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業となります」とあります。通達で具体化すると次の順番です。

  1. 日本標準産業分類で建設業か:大工・左官・鳶・電気・配管・内装・塗装などの工事は建設業。ここまでは第3種の候補(消基通13-2-4)
  2. 他の者の材料に加工等を施して対価を受けているか:「対価たる料金の名称のいかんを問わず、他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供」は第4種(消基通13-2-7)。人工代・手間賃・常用という名前かどうかは関係なく、材料が相手持ちなら第4種
  3. 自分で材料を仕入れて施工しているか:材料込みで請け負い、完成させて引き渡すなら第3種。請け負った工事の全部を他の職人に任せた場合も第3種(消基通13-2-5(2))
取引の形材料区分みなし仕入率
材料込みで工事一式を請け負う(請負)自分で仕入れ第3種70%
元請けの材料で施工し、人工×単価で請求する(常用・手間請け)元請け支給第4種60%
主要材料は元請け支給、ビス・接着剤などの副資材だけ自分持ち主要材料は元請け第4種と判定されるのが通常60%
現場で使った自分の工具・機械の中古売却第4種(消基通13-2-9)60%
第3種と第4種が混ざる人は、取引ごとに区分して帳簿に残せば、それぞれの率で計算できます(No.6505の「2種類以上の事業を営む場合」)。区分していない売上は不利な率で計算される仕組みなので、請求書の明細と出面帳の段階で「材料込み」か「手間のみ」かを分けておくことが、そのまま節税になります。

売上1,000万円の計算例(第3種・第4種・2割特例・3割特例)

税抜売上1,000万円(税込1,100万円)、すべて課税売上として比べます。簡易課税の納付額は「売上税額 − 売上税額 × みなし仕入率」です。

材料を自分で仕入れる請負(第3種)
売上税額 = 10,000,000円 × 10% = 1,000,000円
仕入控除税額 = 1,000,000円 × 70% = 700,000円
納付額 300,000円
元請け支給の手間請け(第4種)
売上税額 = 1,000,000円
仕入控除税額 = 1,000,000円 × 60% = 600,000円
納付額 400,000円
方式納付額(売上税額100万円)使える人・期間届出
2割特例200,000円免税事業者が登録して課税事業者になった人。令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで=個人は令和8年分が最後(No.6498)不要。申告書に付記
3割特例300,000円同上の個人事業者。令和9年分・令和10年分(令和8年度改正で新設)不要。申告書に付記
簡易課税 第3種300,000円前々年の課税売上高5,000万円以下。2年継続前年12月31日まで(特例の翌年は経過措置あり)
簡易課税 第4種400,000円同上同上
本則課税実際の仕入れ・経費の税額しだい誰でも不要(簡易課税を選んでいなければ本則)

手間請けが中心の一人親方は、材料費がないので実際の課税仕入れ(車両・工具・燃料・消耗品など)が売上の60%を超えることは少なく、本則課税より第4種の簡易課税の方が有利になることが多いです。逆に材料込みで請け負い、材料費が売上の7割を超えるような年は、本則課税の方が納付額が小さくなります。簡易課税は一度選ぶと2年はやめられないので、来年の仕事の形も含めて決めてください。

2割特例の終わりと、その後の届出の順番

2割特例は「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間」が対象です(No.6498)。個人事業者の課税期間は暦年なので、令和8年分(2027年3月申告)が最後です。国税庁の令和8年度改正資料では、その後の個人事業者について次のように整理されています。

3割特例(30%)は第3種の簡易課税と同じ納付額で、第4種より有利です。つまり手間請け中心の人は、令和10年分までは3割特例を使い、令和11年分から第4種の簡易課税に移るのが基本線になります。材料持ちの請負が中心で第3種になる人は、3割特例と簡易課税で差がないので、届出は令和11年分の申告期限までに出せば足ります。

記録の残し方:請求書と出面帳で区分を作る

第3種と第4種を取引ごとに分けるには、申告のときに思い出すのではなく、日々の記録の段階で分けておく必要があります。

よくある質問

ビスや接着剤などの消耗品は自分持ちで、主要な材料は元請け支給です。第3種になりますか?

主要な材料を元請けから支給されて手間を出す形は、他の者の材料に加工等を施して対価を受ける役務の提供(消費税法基本通達13-2-7)に当たり、第4種です。ビスや副資材を自分で買っていても、主要な材料が相手持ちなら判定は変わらないと考えてください。迷う取引は請求書に材料の負担を明記した上で、税務署に確認してください。

インボイス登録したばかりで、令和8年分は2割特例です。簡易課税の届出は今すぐ必要ですか?

令和9年分・令和10年分は3割特例が使えるので、急いで届出する必要はありません。3割特例は届出不要で、確定申告書に適用する旨を付記するだけです。簡易課税の届出は本来「使いたい年の前年12月31日まで」ですが、2割特例・3割特例を使った翌年については、その年の確定申告期限までに届出すればその年から簡易課税を使える特例があります(国税庁の令和8年度改正資料)。

材料持ちの請負と手間だけの常用が混ざっています。全部第4種で計算した方が安全ですか?

安全ではなく、損です。第4種のみなし仕入率は60%で第3種の70%より低いので、全部を第4種にすると納付額が増えます。取引ごとに第3種(材料持ち)と第4種(手間のみ)を帳簿で区分すれば、それぞれの率で計算できます(国税庁No.6505)。逆に区分していない売上は不利な扱いになるので、請求書と出面帳の段階で「材料込み」「手間のみ」を分けて記録してください。

親方帳なら、常用と請負を分けたまま請求書と売上が残る

親方帳は一人親方・職人の出面帳アプリです。現場ごとに常用・請負の別を付けて出面(人工)を記録し、人工単価から請求金額を計算して請求書PDFを発行します。インボイスの登録番号の記載にも対応しています。常用(手間のみ)と請負(材料込み)が現場単位で分かれて記録されるので、この記事の「第3種の売上」「第4種の売上」を年末に集計する土台がそのまま残ります。経費はレシートを撮るだけで建設業の勘定科目に自動分類されます。

親方帳のアイコン

親方帳

一人親方・職人の出面帳。現場ごとの人工から請求書PDFまで、経費は建設業の科目に自動分類

親方帳をApp Storeで見る

基本無料・買い切りPro ¥1,000 | データは端末内保存 | ブラウザで使えるWeb版

あわせて読む

参考(一次資料)

いずれも2026-09-12に確認。